
自宅でのくつろぎの時間や仕事の合間に、ハンドドリップで淹れたコーヒーを楽しんでいるあなた。
喫茶店や映画のワンシーンなどで、お湯を注いだコーヒー豆が盛り上がって膨らむようすを見たことがあるのではないでしょうか。
しかし「自分でドリップするとあんなに膨らまないんだけど…なぜ?」と不思議に思っているかもしれません。
今回は、コーヒー豆がドリップ時に膨らまない理由と解決策、そしてそもそも「膨らむ=おいしい」なのか?という疑問にもお答えします。
コーヒー豆の膨らみのモトは?
挽いたコーヒー豆にお湯を注ぐとふんわり膨らむのは、焙煎時に発生した「二酸化炭素(CO2)」がコーヒー豆の内部から逃げ出し、その泡が表面に集まるから。
二酸化炭素は「炭酸ガス」ともいい、ロースター(焙煎士)のあいだでは単に「ガス」と呼ばれることもあります。
コーヒー豆がドリップ時に膨らまない原因
粉にしたコーヒー豆にお湯を注いでもあまり膨らまないときに考えられる原因はいろいろあります。
次に1つずつ紹介していきます。
そもそも豆の量が少ない
自宅などで1人分のコーヒーをドリップするときのコーヒー豆の適量は約10gとされています。
一般的なドリップ用フィルターに入れた時、10gでは、底の方に少しだけ豆(粉)があるような状態。
この量ではふっくらとしたボリュームが出るのは難しいことが多いです。
喫茶店などでは数人分のコーヒーをまとめてドリップすることも多く、じゅうぶんな豆の量があるので、よけいにモコモコと膨らんで見えるのですね。
お湯の温度が低い
コーヒーをハンドドリップで淹れる場合、注ぐお湯は、90℃を中心に85~95℃が適温とされています。
80℃などに湯温が下がっていると膨らみが悪い傾向があります。
注ぎ口が広すぎる
ドリッパーにお湯を注ぐときのケトル(やかん)は、コーヒー専用のものは注ぎ口がとても細く作られています。
一般的なやかんの場合、お湯が一度にたくさん出てしまい、炭酸ガスがまんべんなく出てこない可能性もあります。
蒸らしが不十分・蒸らしをしていない
ハンドドリップでは、最初に少量(1人分あたり20cc程度)のお湯で30秒ほど蒸らすことで、その後のお湯が全体にスムーズに行き渡り、より芳醇な味と香りが抽出されやすくなります。
この「蒸らし」が不十分だったり、全くおこなわなかったりすると、水分が十分に浸透せず、ふくらみのモトとなる炭酸ガスもでてこない可能性があります。
豆の挽き方
フレンチプレスやパーコレーターといった、挽いたコーヒー豆がお湯につかる構造の器具を使う場合、豆は粗く挽くのがおいしさのコツ。
しかし、ハンドドリップでこういった粗挽きの豆を使うと、きれいにふくらまない可能性があります。
▼ハンドドリップに適した、中挽きに合うコーヒー豆なら
焙煎度合い
「浅煎り」のコーヒー豆は、焙煎時間が短く内部に水分が多く残り、炭酸ガスは少なめの状態です。
反対に、エスプレッソなどに使用する超深煎りの豆も、焙煎の工程で炭酸ガスが減少していて膨らみにくいでしょう。
焙煎や挽いてからの時間が経っている
上記の条件をすべてクリアしても、やはり豆が膨らまない…という場合、豆そのものが、焙煎または挽いてから時間が経っているという可能性もあります。
焙煎した豆からは、保存中にも膨らみのモトとなる炭酸ガスが少しずつ抜けていきますが、その速度はゆっくりで、2週間から1か月近くは比較的膨らむ力が残っています。
しかし、いったん挽いてしまうと炭酸ガスの減少は急激に進み、3日程度でほとんどなくなってしまい、ドリップ時に膨らむのは難しくなるそう。
香りや味の面からも、可能な限り豆のままで購入して、淹れる直前に挽くのがおすすめです。
コーヒー豆が膨らまない時の解決策
以上、せっかくハンドドリップしたのに豆がうまくふくらまない時の理由・原因を紹介してきました。
- 豆の量が少ない
- お湯の温度が低い
- お湯の注ぎ口が広すぎる
- 蒸らしが不十分
- 粗挽き豆を使っている
- 浅煎り・超深煎りの豆を使っている
- 焙煎または挽いてから時間が経っている
豆の新鮮さが原因だった場合は、コーヒー豆専門店、それも自家焙煎のお店で焙煎して間もない新しい豆を買うのがおすすめです。
さらにこだわりたい人は、生豆を購入し、自分で焙煎に挑戦してみるのも面白いですね!
「膨らむほどおいしいコーヒーができる」は間違い?
ところで、焙煎したてのコーヒー豆には多くの炭酸ガスが含まれていると解説しましたが、では、新しければ新しいほど、膨らめば膨らむほど、おいしいコーヒーなのでしょうか?
答えは「No」です。
たしかに、焙煎直後のコーヒー豆には大量の炭酸ガスが含まれており、これを挽いてお湯をそそぐとモコモコと非常に大きく膨らみます。
しかしあまりにも多いガスはお湯がコーヒー豆に浸透する妨げとなり、味や香りなどの成分がコーヒー液のほうに出てこられずに味が落ちてしまいます。
そのため、焙煎所では、焙煎後2日ほどガスが落ち着くまで寝かせてから販売しています。
3日目以降はとてもおいしく飲めますので、ぜひ、ドリップ直前に豆を挽き、ふんわり膨らむ様子を楽しんで下さいね!